タバコ部屋
第二開発室の最寄の喫煙室は、廊下の一番奥に造られた、4人も入れば窮屈になる手狭な部屋だ。丸椅子に腰掛け、ゴウゴウと唸る機械に煙を引っ張られながら、煙草を吸っている。
「乾さあ」
「…は、何すか」
お互い壁に背中を預けて座っているが、向かいの同僚とは膝が触れそうな近距離だ。
「社のほうの、営業の二見って、仲良いんだっけ」
「…仲良いっすねえ。本社ん時からの付き合いなんで。二見さんが何?」
「いや、聞こう聞こうと思っててさ。どんな奴なの、実際のとこ」
「あれ、会ったことないっけ?」
「あるけどさ、どんな奴かまでは知らねーもん。先月だったか社で見かけたら、なんかカラー巻いてたけど。事故ったの?」
優れた容姿の、ヤリ手営業マン。二見という男は、その実体から離れたところでも注目され、存在感を振りまいてやまないらしい。
「あー、相手トラックだって。それで頚椎捻挫で済むんだから、どんな奴かって、悪運強い奴としか言い様ないっすねえ」
「へー、そりゃ大変だ。で、独身なんだっけ?あ、結婚するんだっけ、ハーフの彼女と」
「…マジ?そんな噂あんの?」
噂や風評の耐えない男でもある。今、同僚の口から発せられたそれには、乾の知らない新たなキーワードが満載だ。膝と膝がぶつかるのに構わず、乾は身を乗り出した。
「それ詳しく聞かせてくださいよ」