out of nothing but curiosity
ちらちらと携帯電話ばかりいじっていたら、いきなり取り上げられ、空のスープ鍋に入れられて、キッチンの吊戸棚に収納されてしまった。そう、踏み台も背伸びもなしで簡単に吊戸棚を開けられる長身の恋人が、肩を竦めて振り返る。
「さて…俺に、何か不満が?」
ハンサムな顔で皮肉っぽく笑うので、摂は率直に答えた。
「ノアはパーフェクトだよ」
「ありがとう。じゃあ、何がそんなに気になるの?」
二人でいるのに携帯電話ばかり気にされたら、ふつう、もっと怒る。まず話し合いを選ぶ、彼は平和主義者だった。茶化すのをやめて、今度は、素直に答える。
「心配事があるんだ」
「うん?」
「慧斗くんがね、ペアリングを失くしちゃったんだって。そのこと乾に言えなくて悩んでたんだけど…俺も大したアドバイスしてあげられなくてさ」
「…そう。何てアドバイスを?」
「早めに打ち明けたほうがいい、とだけ」
ノアは深い色の黒目を柔らかく細めて、頷いた。摂を支持する仕草だ。
「今夜会うって言ってたから。この時間だともう会ってるかなあと思うと…」
「思うと?」
「野次馬根性がふつふつと!」
勢い込んでそう言うと、平和主義者の彼は、仕方なさそうに首を振った。
END