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IZAKAYA☆SESSION

 盗み飲んだ焼酎のお湯割りが気に入ったらしい。いや、正確には、ぬるすぎて気に入らなかったので、熱いのを飲みたくなったらしい。つられて二杯目を飲みながら、信広のグラスの中身が気になっている。
「何」
「べつに」
「あそ」
 頓着なく前を向いてしまうので、水兎はむっとして信広の脚を蹴った。カウンターのスツールに対しても長いので、しかも開いているので、さっきから膝が邪魔なんだ。
「何だよ」
 嫌そうに眉をしかめて、何、と訊いたのはその行為に対してだったろうけど。水兎は構わず、話を戻した。
「ねー、梅干入れて美味しい?」
「美味いぜ?飲んでみる?」
 差し出されるグラスを、両手で拒む。
「いい。俺、梅干嫌い」
 余計な情報まで付け加えてしまったことに気づいたのは、ほんの数秒後だ。小皿にいくつか盛られていた大粒のそれを、一粒わざわざ素手で摘んで、水兎のグラスの中に落とす。焼酎のお湯割り梅干入り、の、完成。
「…ありえねーっ、ちょー無神経!」
 隣の男はにやにや笑っているだけだ。頭に来るあまり泣けてきて、そうすると今度は信広が顔をしかめる。
「おま…泣くことねえだろ梅干で」
「責任取れ、バカ」
「はいはい、飲めばいいの?」
「よくない!」
 じゃあどうしろっつうの、と、信広がいきり立ったところで…また間を割るように長い腕が。
「これはノブヒロが飲め。で、ミトには新しいの作ってやるから。お前らこれ以上ここでやり合ったら、怒るよ?」

…We’re sorry,Master.

 

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